「年収106万円を超えると損をする」
そんな“働き控え”を生んできた「106万円の壁」が、ついに撤廃される方向で議論が進んでいます。
これはパート・アルバイト・主婦・副業ワーカーにとっての就業ルールが大きく変わる可能性を意味しており、制度の理解と今後の働き方の見直しが必要になります。
この記事では「106万円の壁」とは何か、なぜ撤廃されるのか、そして撤廃によって私たちの生活や働き方がどう変わるのかを、わかりやすく解説します。

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【1. 106万円の壁とは?──“働き損”を生む制度の正体】
●「106万円の壁」は社会保険加入のボーダーライン
現在、以下の5つの条件を満たすと、年収106万円を超えた時点で厚生年金・健康保険(社会保険)への加入が義務化されます。
【加入条件】
勤務先が従業員101人以上の企業であること
1週間の労働時間が20時間以上
月額賃金が8万8,000円以上(年収換算で約106万円)
勤務期間が2か月を超える見込みであること
学生でないこと(学生は対象外)
この制度により、多くの人が「106万円を超えないように」働き方を調整しています。
なぜなら、社会保険に加入することで保険料の自己負担分が発生し、手取り収入が減ってしまうからです。
【2. なぜ撤廃の動きが出てきたのか?】
●少子高齢化と人手不足が背景に
企業では慢性的な人手不足が深刻化しています。
特にパートタイマーを中心とした非正規雇用層の労働時間に上限があることで、人材の有効活用が難しい状況が続いています。
また、政府としては社会保険料の徴収対象を広げることで、制度の財政基盤を強化したいという狙いもあります。
つまり、「働きたい人がもっと働けるようにする」ことと「社会保障制度の支え手を増やす」ことが、制度改正の大きな目的です。
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【3. いつから?──施行予定時期とスケジュール】
厚生労働省は2026年10月施行を目指して法改正の準備を進めています。
ただ、106万の壁が撤廃されても、年収以外の加入条件は維持されます。
ですので、一部の人は引き続いて社会保険加入の対象外となります。
【4. どう変わるのか?──制度変更のポイント】
■変更前:年収106万円を超えると社会保険に加入(企業規模による)
→ 働く時間を調整する人が多数
■変更後(予定):企業規模に関係なく、一定条件で社会保険に加入義務化
現時点で厚生労働省が検討している改正案では、企業規模に関わらず、年収106万円を超えた場合は原則として社会保険加入が義務化される方向です。
また、現在は従業員101人以上の企業が対象ですが、2026年の制度改正により、以下の条件を満たすとすべての企業で社会保険に加入する必要が出てきます。
【2026年以降の加入条件(予定)】
従業員数の要件が撤廃(企業規模にかかわらず適用)
週20時間以上の勤務
月額報酬が8万8,000円以上(年収換算で106万円以上)
勤務見込み2か月超
学生でないこと
上記はあくまで予定です。
これにより、たとえ従業員5人の小さな店舗で働いていても、上記の条件を満たせば社会保険に加入する必要があります。
【5. メリットとデメリット──働き方の再考が必要】
【メリット】
壁を気にせず働けるようになる
社会保険に加入することで、将来の年金額が増える
医療保険・傷病手当などの保障も得られる
フルタイムや短時間正社員への移行を検討しやすくなる
【デメリット】
手取り収入が減る可能性(保険料負担増)
企業側の人件費負担も増え、シフト調整や雇止めの可能性も
配偶者の扶養から外れることによる家計全体の影響
【6. “働きやすさ”の裏で──「結局、税金を取りたいだけなのでは?」という声も】
一部の専門家や国民からは、「制度改正の本質は“取りやすい層への増税”だ」という批判も出ています。
確かに、パート・アルバイト・副業など“柔軟な働き方”をしている人々にとって、「もっと自由に働けるようになる」ことと引き換えに、“国が保険料や税を取りやすくする仕組み”が整備されているようにも見えます。
政府のいう「働きやすさ」が、真に国民のための制度なのか、それとも財源確保が優先なのでしょうか・・・。
私たち国民は、それを見極める目が求められています。
【7. 今後どう行動すべきか?】
収入と支出のバランスをシミュレーションする
将来の年金受給額も含めた「総合的なメリット・デメリット」を把握
会社と働き方について相談する(正社員化・時短正社員なども選択肢)
税や保険の知識を日常から身につけることが、最大の防衛策になる
【まとめ】
106万円の壁は、「働き控え」を招く制度だった
2026年10月の撤廃に向けて、制度改正が進んでいる
働く人にとってのメリットもあるが、手取り減少や家計への影響も見逃せない
「働きやすさ」と「財源確保」のバランスに対する国民の監視が必要
制度は変わっていきますが、私たちが「損をしない働き方」を選ぶには、情報を正しく理解し、自分で判断する力がますます大切になっていきます。